ぼくらは自分の価値観や色眼鏡を通してしか、世界を見ることができません。
といっても、それは視野が狭いとか、そういう次元の話じゃないんですよ。脳って、そもそもそういう作りになっているってコトで。
だから低スペックのパソコンみたいにフリーズすることなく、瞬時にいろんな感情を作り出したり判断をしたりできるワケです。
そんな色眼鏡のひとつに「自分だったらこう思うんだから、相手もそうに違いない」という“思い込み”がありますね。
これ、当然そうだろうと信じ込んでいるのでまるで自覚していないことが多いのですが、相手は意外と全く違うことを感じていたりするので厄介なんです。
今回の「恋愛Jp」Q&Aでも、彼がゲーム三昧だから私の存在を無視されている気がする…という話が出てきます。
これも「もし私がゲーム三昧なら相手の存在を無視しているはずだから、きっと彼もそうに違いない」という思い込みがバリバリ入っていますよね。
とはいえ、それは思い込む人が悪いワケじゃないんです。あくまでも人間の脳ってそういう風に動くっていうコト。
だからそんなことで自分を責めたりする必要はありません。
思い込みに気づけた瞬間、目からウロコで新しい世界が見えてくるのです。思い込みを責めるんじゃなくて、新しく見えてきた世界を楽しんでみませんか?
【相談者:20代女性】
彼と同棲して2か月になります。同棲する前はいろいろ不安もあったんですが、意外と大丈夫だったので安心しています。
ただひとつ、イラッとすることがあって、それは彼がゲームばかりしていることです。別に毎日一緒にデートに行きたいとか、そんなことは望んでいません。
一緒にいるんだから二人で楽しめる時間も作ってほしいだけなんです。DVDを借りて見るとか、そんなことでいいのに。
ゲームをしているのを見ているとだんだんムカついてきて、「ご飯作らない」とか「家出する」とか言って脅かすとその場は収まるんですけど、私の目を盗んでやっているのでキレそうになります(苦笑)
ゲームをせずに二人の時間を作ってもらういい方法はないでしょうか。
A.彼のゲームでどんな気持ちになるのか、自分の本心を確かめよう
日常の迷宮脱出ガイド、心理分析士の咲坂好宥です。
せっかく同棲したのにゲーム三昧って、たしかにムカつきますねぇ。お気持ちお察しします。
とはいえ、ゲームを粉々に破壊することもできないでしょうから(苦笑)、お二人の心理にフォーカスしながら平和な落としどころを探っていきましょう。
脅して禁止することの効力
彼がゲームをしているところを目撃すると、あなたは“ご飯作らないとか家出するとか言って脅かす”のですね。
これが効果的なのかどうかについて検証したいのですが、これに関連する興味深い実験をスタンフォード大学のジョナサン・フリードマンが行っています。
7~9歳の男の子を部屋に1人にします。そこにはいくつかのおもちゃがあるのですが、フリードマンが、「ロボットで遊んだら怒るぞ」と脅かしたところ、22人中20人はロボットに触れませんでした。
その6週間後、同じ部屋に彼とは別の若くて優しそうな女性を1人ずつ連れて行き、「どのおもちゃで遊んでもいい」と伝えたところ、おもちゃで遊んだ子の77%が以前に禁止されたロボットで遊んだそうです。
さて、フリードマンは別の男の子たちにも同じような実験を行ったのですが、今度は脅かすのではなく、「ロボットで遊ぶのは悪いことだから」という理由を説明してロボットで遊ぶのを禁止しました。
このときも22人中21人はロボットに触れませんでした。ここまでは脅かしたときとほとんど変わりませんね。興味深いのはここからです。
こちらのグループも6週間後にまた同じ部屋に連れて行かれたのですが、「好きなおもちゃで遊んでもいい」と言われてロボットで遊んだ子は33%に過ぎませんでした。
この実験からわかるのは、罰で脅すのは一時的に効果があっても、脅しが通じなくなると無視されるということです。
一方、理由を説明されて“自分の意思で”触らなかった子は、自分で決めたそのルールを一貫して守ったのです。
この心理は『一貫性の原理』と呼ばれています。
あなたは彼のゲームをやめさせるために脅しを使ったわけですが、どうやらあなたの目を盗んでゲームをしてしまう彼の心理は、この男の子たちと変わらなそうですね(笑)
『Iメッセージ』で伝えてみる
ジョナサン・フリードマンの実験からわかることは、“自分の意思で”ゲームを控えるよう彼を納得させるのが一番ってことです。
あなたはなぜ彼がゲームばかりしているのが嫌なのか、彼が納得できるように伝えましたか? もしまだなら、彼がゲームばかりしているとどんな気持ちになるのか、“Iメッセージ”で伝えてみましょう。
Iメッセージというのは、「I」(=私)を主語にしたメッセージのことです。
「なんであなたはゲームばかりしているのよ!」なんて言うとケンカ腰ですよね。これは“YOUメッセージ”です。
これをたとえば「あなたがゲームばかりしていると、私は大切にされていない気がしてすごくさみしくなるんだ」というように、メッセージの主体が「私」となるように伝えるのです。
そうすることで、責めているような印象を弱めることができますし、あなたの気持ちが伝わることで彼も納得するかもしれません。
今までと違う行動パターンをしてみて違う世界を味わってみる
ところで、Iメッセージで気持ちを伝える以上、あなたはご自分が本当はどう感じているのか、ちゃんと理解しておく必要がありますよね。そこで、ご自分自身に次の質問をして、答えを感じてみてください。
自分自身の気持ちを確かめる2つの質問
- 彼がゲームばかりしているとどんな気持ちになるのか?
- なぜそう感じるのか?
たとえば、「さみしい、もっと大切に扱ってほしい」、それは「自分の存在を無視されているような気がするから」……というように。
さて、答えが出たところでちょっと考えてみてください。
「それ、ホントですか?」
たとえば今の例で言うなら、本当に彼はあなたの存在を無視しているんでしょうか、ということです。
ゲームというのは依存性が強いと言われています。おそらく、彼は単にゲームに依存しているだけではないでしょうか。
いや、それはそれで問題なんですが(苦笑)
彼がゲームに依存しすぎて視野が狭くなっているのだとしても、少なくともあなたの存在自体を無視しているわけではないですよね。
だとしたら、「自分の存在を無視されているような気がするからさみしい、もっと大切に扱ってほしい」という気持ちは、ちょっとピントがずれている可能性がありませんか?
あなたが求めていることは「二人で一緒の時間を楽しむこと」ですよね。でも彼はゲームに依存気味で視野が狭くなっている……。
それなら、いっそのこと彼と一緒にゲームを楽しんでみるというのもひとつの手ではありませんか?
今までの行動パターンを変えるというのはなかなか腰が重いですよね。でも、違う行動パターンにトライしてみれば、思い込みが変わったり少し違う世界が見えたりするものです。
今すぐ彼が変わらないのなら、あなたが現実の見方を変える、というほうが実は簡単なのかもしれません。
でもそれは決して彼のために彼に合わせましょう、ということではありません。そのほうがあなたのココロが軽やかになるならご自分のためにちょっと変えてみましょうよ、ってことです。
あれはOK、これはダメ……という今までの思い込みを外して、あなたのとはちょっと違う彼の世界に踏み込んでみるのも、意外な驚きがあるかもしれませんよ。
あなたがゲームに依存しない程度に、ですが……(笑)
お二人がもっと仲良くなりますように!
“Who wants to play video games?” / JD Hancock
【参考文献】
・『影響力の武器』(ロバート・チャルディーニ著、誠信書房)
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今日も最後まで読んでくださいまして、ありがとうございました。
咲坂好宥
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